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医学博士 安部博幸 監修



[監修のことば]

科学は進歩を遂げました。その事実を認めない人はいませんが、なぜ科学が私たちを
悩ませている「ガン」を征服できないのか、その歩みをもどかしく感じる人も多いのでは
ないでしょうか。

 確かに科学は、英知を投入して多くの「抗ガン剤」を開発してきました。
しかし、きわめて強い副作用問題を解決できなかったばかりか、ほどんどの抗ガン剤は、
大人のガンには効果をもたらさないことが臨床の現場でわかったのです。
そのため、複数の抗ガン剤を併用する方法なども臨床的に工夫されていますが、苦肉の
策の域を出られないのが現状です。

 そんな中で、これまで科学が見落としてきたものの有効性を、科学的に再発見しようと
するアプローチが脚光を浴び始めています。
その最先端にあって、抗ガン作用にまったく新しい光を当てるものと期待されるのが、紹
介するオキナワモズク(海藻)に由来する多糖体「フコイダン」です。
この機能性物質は、ガンの克服とともに「健康の創出」に新機軸を開くに違いありません。


1、「紺碧の海」に誕生した機能性食品

●日本一の長寿県は「海の幸の宝庫」

紺碧の海原に浮かぶ太陽の島・沖縄―その名前から誰もが真っ先に思い描くのは、
躍動する生命、そして弾むような健康でしょう。
沖縄が日本一の長寿県だからでもありますが、理由はそれだけではなさそうです。

 この地球上に40億年前、初めて生命が誕生したのは海中でした。荒々しい世界に、
酸素を必要としない藍藻類(らんそうるい)が誕生したのです。
やがて藍藻類が出す酸素を利用する生物が生まれ、原始の生命は進化を遂げていく
のですが、私たちの遺伝子にはきっとその生命誕生の遠い記憶が刻まれていて、太
陽にきらめく海原に「生命=健康」のイメージを感じ取るに違いありません。

 植物に囲まれたときの心の安らぎ、海中に繁茂する海藻(海草)の群生を目にした
ときの胸のときめきも、そんな遠い記憶の賜物(たまもの)なのでしょう。

 この生命を育んだ大海原が、健康を願う私たちにとって大切な"何か"を送り届けない
はずがありません。その大事な一つが海藻だったのです。


●沖縄発=新ヘルシー情報の中身は「フコイダン」

 海藻といえばノリ・コンブ・ワカメ・モズク・ヒジキなどが、すぐに頭に浮かびます。
おいしい食材としてばかりでなく、カルシウムや沃素(ようそ)などのミネラル、ビタミンなど
の栄養源として、さらに近年はヌルヌル成分であるアルギン酸(食物繊維)のコレステロー
ル吸収抑制作用、ラミニン(糖タンパク質)の血圧降下作用などの機能性も注目されてきま
した。

 ちなみに、「海藻」は海中に生えて胞子によって繁殖する藻類(緑藻類・渇藻類・紅藻類)
に大別される)をいい、「海藻」は海岸近くの海中に生える、花を咲かせて種子で繁殖する
植物(アマモ・イトモなど)をさします。

 ところでこの海藻から新しく見出され、私たち誰もが心しなくてはならないガンに対する
"特別な効能"(有効作用)が認められた機能性成分があります。
それが「フコイダン fucoidan」という多糖体(科学的には「フコース」を主構成糖として硫酸
やウロン酸が結びついた物質)です。

 フコイダンは、"海からやって来た新しい抗ガン物質"なのです。


2、「海の多糖体=フコイダン」の横顔


●ガン細胞はフコイダンに弱かった!

 日本人の平均寿命が世界一へ向けて驀進(ばくしん)し始めたころから、その喜びとは
裏腹にガンの発生件数が増え、死亡者数も増えてきました。1998年のガンによる死亡
者数(厚生省「人口動態統計(確定数)」は28万3921人で、第2位の心疾患の2倍に達し
ています。

 こうした中で新たな抗ガン剤も開発されてきましたが、副作用問題などを解決できずに
きた過程で、科学製剤ではない、薬用キノコや薬用植物などの有効成分が探索され、抗
ガン活性を示すいくつかの成分が認められてきました。その一つが、β(ベータ)―グルカ
ンのような多糖(食物繊維)です。

 菌類や植物の多糖に抗ガン活性があるように、海の藻類の多糖にもそれが認められる
のではないか ― その着想から、コンブ、ワカメ、モズク、アラメなどの多糖体である「フコ
イダン」が研究対象とされ、ガン細胞がフコイダンに弱いことが明らかにされたのです。


●ガンとの闘いの新局面は「ガン細胞の自殺」

 すでにアラメやホンダワラといった海藻由来のフコイダンの抗腫瘍活性や、モズク(オ
キナワモズク)から得られたフコイダンの抗潰瘍作用などが学会で発表されていました
が、第55回日本癌学会(96年)という大きな舞台でその抗ガン作用の研究が発表され
たのは、コンブを原料にしたフコイダンが最初です。

 海藻がガンに効く! ― 海藻ということも意外でしたが、フコイダンの抗ガン作用は抗
ガン作用は抗ガン剤などとは異なる作用機序(作用の仕方)をするらしいこと、すなわち、
ガン細胞を「自己崩壊=自殺(アポートシス)へ追い込む」という抗ガン作用である点も感
心を呼びました。

 追いかけるようにモズク(オキナワモズク)から得られたフコイダンの抗ガン作用に関す
る研究発表(長岡政人ら。98年)も行われ、相前後して、モズク(オキナワモズク)からは
他に比して非常に純度の高いフコイダンが得られるということも明らかにされたのです。


3、「オキナワモズク」にはフコイダンが豊富

●沖縄特産のモズクとフコイダン

 フコイダン(海藻多糖体)の抗ガン作用や抗腫瘍作用、コレステロール低下作用などが
順次立証されてくると、それではどんな海藻類からフコイダンを精製すべきか、機能性の
優劣はどうかという問題が浮上しました。

 古くからの貴重な食材であるコンブは、年々需要が増える反面、収穫を増やすのは容
易ではありません。そこで注目されたのが、沖縄で人口養殖に成功し、今や国内生産率
の90%を占めるようになったモズクでした。

 全国で10種類あるモズクのうち、沖縄で養殖されているのは2種類です。

(1)オキナワモズク(ナガマツモ科。学名:Cladosiphon okimuranus)渇藻類。
  西表島から奄美大島に至る海域の特産種。粘性に富み、太さ1.5〜3.5o、長さ25〜
  30p。海面に張った大きな養殖網に繁茂させます。

(2)モズク(モズク科。通称:いともずく。学名:Nemacystus decipiens)渇藻類。
  同種の九州以北産のものはホンダワラ類に着生する(そのため「藻につく=モズク」と
  呼ばれる)のに対し、沖縄産は着生しません。

 このうち白羽の矢が立ったのが、琉球大学農学部生物資源科学科の分析でフコイダン
の収量が3倍強も多いことがわかったオキナワモズクです。


●オキナワモズクは高純度のフコイダンが採れる

 同じく琉球大学の研究によって、オキナワモズクのフコイダンの科学組成は、全糖
(67.2%)、ウロン酸(13.5%)、灰分(23.0%)、硫酸(11.9%)、水分(3.2%)であること、
またその構成糖の大部分は「L ― フコース」で、ほかにわずかに含まれる「D ― キ
シロース」とともに、フコイダンの有効作用の主軸を形成している推定されたのです。

 さらに重要な事実もわかりました。例えばコンブなどからフコイダンを調整しようとす
ると、ヌルヌル成分であるアルギン酸などが混入して精製には相当の困難が伴うので
すが、コンブに比して約5倍のフコイダンを含むオキナワモズクでは、その問題が容易
に解決できることがわかったのです。

 こうして純粋なフコイダンを、能率的に精製する道が開かれました。


4、ここまできたガンとの闘い

●ガンの正体が見えてはきたが・・・

 「『早期発見、早期治療』はこれまで、ほかに決定打がないこともあって、ガン治療の
切り札と考えられてきました。しかし今、このワンパターンの図式を考え直す時期にき
ているのです」(安部博幸編著『フコイダンでガンが消えた!』フクモリ出版) ― ガンを
恐れ、完全な治療に道が開かれることを願ってきた私たちの胸に、これほどグサリと突
き刺さる言葉も他にありません。早期発見や早期治療の限界とは、どういうことなので
しょうか。

 ガンは、細胞にある遺伝子の破損(異常)によって発生すること、また、放射線などが
原因となることが確実視されるようになりました。
だとすれば、ガン細胞はすべての人の体内で常に発生しているということになります。


●まだ越えられないられないガン治療の"その一線"

 ただ、多くの場合は身体に備わった免疫作用でその初期のガン細胞は排除されて
しまうのですが、排除に失敗して生き残ってしまうと細胞分裂を繰り返し、10年、20年
の間に臨床的にわかる大きさに成長するのです。
その段階になって見つかるのですから、ずいぶん遅い"早期発見"ですし、すぐに治療
を始めたとしても、決して"早期治療"ではない。
すでにあちこちへ転移していると考えるのが妥当である ― と、安部博士は著書で述べ
ています。

 同じガンでも、中には転移しない(「ガンもどき」などと呼ばれる)ものがあることがわか
ってきました。しかし、病理診断でそれを判断するのは非常に困難なので、一律に積極
的治療法として、"殺ガン"を目的に切除手術、抗ガン剤投与、放射線照射が行われて
きたのです。
危険を承知の上で仕方なく選択されたとはいえ、このままでよいはずがありません。
フコイダンは、この矛盾を解くものとして期待されたのです。


5、「理想の治療」に貢献する代替医療

●手詰まりの医療に道を開く試みが続いている

 医療現場で苦戦を強いられているガン多発の背後には日本の高齢化現象があり、そ
のための自然増という面も考慮すれば、あまり神経質になりすぎるのは考えもの ― と
も安部博士は述べ、クヨクヨしない前向きの精神状態がガン細胞を攻撃するNK細胞の
活性を高め、ガン細胞の成長を押さえ込む結果をもたらすという精神免疫学の成果を報
告。また、抗ガン剤のように「ガン細胞を壊死させる」ことを目標とせず、体に備わった自
然治癒力の主役である白血球(免疫細胞)の活性を高めることを目標に生薬(しょうやく)
や機能性食品を使うこと、あるいはガンは熱に弱いので人為的に体温を高めることでガ
ン細胞を攻撃する「温熱療法」などが工夫され、それらの結果が「代替医療」として再認
識されてきた現状も指摘されています(前掲書)。


●代替医療の「特等席」を占めるのはフコイダン

 私たちが願うのは「治癒率100%」という目標へ少しでも接近することです。
そのためには「治療法はこれしかない」と決め手かからず、現実に有効であった代替医
療を尊重することではないでしょうか。

 そのような反省もあって、事態は少しずつ進んできているのです。
 従来は病気の複雑な原因を見つけ出し、わかった原因を一つ一つ潰したり取り除くこ
とが治療の本筋でしたが、そのように"処置する"だけに止まらず、病気を跳ね返すよう
な体に戻すこと、その動きを"援助する"ことの大事さも見直されるようになってきたので
す。

 高い評価を受けるようになった機能性健康食品(成分)の中には、病気に立ち向かう免
疫力を高めることで、むしろ"病気を治す"というよりも"病気にかからない体にする"とで
もいうべき作用が、実際に解明されたものもたくさんあります。
そこでフコイダンは、抗ガン作用一つをとってみても、従来のものとは一風変わった「特
別な作用」をする機能性成分として、これからの代替医療の「特等席」を占めるのではな
いかと期待を集めているのです。


6、ガン細胞を「自殺」へ追い込む

●ガンは秩序を失った無法者集団

 話を進める前に、ちょっと復習をしておきましょう。
 私たちの体を構成している60兆個もの細胞の一つ一つは、DNAという遺伝子を持って
いて、あらゆる生命活動に関わる遺伝情報を保持しています。
細胞が分裂して新しく生まれ変わったり、老化して不要になったら死滅することを指示す
る情報も、そこに書き込まれているのです。

 遺伝子のこの部分が、活性酸素や発ガン物質などによって傷つき、そのために死なな
くなった状態 ― それが細胞のガン化の第一歩なのです。

 ガン化した細胞はそれまでとはまるで違った性質を帯びて、どんどん増えながら周囲の
正常細胞を浸潤(しんじゅん)していきます。この"異物"を排除するシステムが体の免疫
機能ですが、それを担当する白血球などの量が不足したり、活性が弱ったりすると、ガン
細胞を排除できなくなってしまいます。


●細胞の自殺死(アポートシス)を助けるフコイダン

 薬用キノコなどの特別な機能性成分に「免疫賦活力がある」とされたりするのは、この
体内の免疫機能を高める働き ― 言い換えれば「自警団を強くする」ような働きがあると
いうことで、有効成分が抗ガン剤のようにガン細胞を壊死させる毒性を持っているのでは
ありません。悪者が住めないような環境をつくっていく、そんな働きに譬え(たとえ)られる
でしょう。

 ところが、海藻多糖体フコイダンは、死ぬべきときに死ななくなってしまったガン細胞に
直接作用して、死ぬように仕向ける働きをするのです。

 生物の正常細胞は、いずれもこのような「死のプログラム」を持っていると考えられてい
ます。オタマジャクシの尻尾が消えるのも、胎内で私たちの指の間の"水かき"のような
部分が消えて指が独立していくのも、その部分の細胞がプログラムに沿って死滅するか
らです。このような現象を「アポートシス(細胞の自殺死)」といいますが、フコイダンがガン
細胞に対して、まさに「自殺幇助(じさつほうじょ)」をすると考えられているのです。


7、破られた医学常識

●フコイダンでガン細胞が消えた

 ガン細胞に対して、フコイダンはどのように作用するのでしょうか。
 ガン細胞(ヒト大腸ガン細胞)と正常細胞それぞれ約1万個植え付けたシャーレに、オキ
ナワモズク由来のフコイダン溶液(水1Lに対しフコイダン1g)を添加する実験(前出の研究
グループによる)が行われました。
24時間後、ガン細胞は約半分に減少しましたが、正常細胞に変化はりません。
60時間後も正常細胞に変化はありませんでしたが、ガン細胞はほぼ全て消滅したのです。
この事実は、フコイダンがガン細胞に直接作用すること、しかし正常細胞には毒性を示さ
ないことを表しています。

 そこでさらに、ガン細胞を皮下に移植した10匹ずつのマウス2群を用意し、1群にはオ
キナワモズク由来フコイダン(濃度は上記と同じ)を21日間、口から直接ゾンデ(管)で胃に
流し込んで投与、もう1群は何の処置もせずに飼育し、30日後に解剖してガンの大きさを
比較したのです。
すると驚いたことに、フコイダン投与のマウスは、10匹中6匹のガンが完全消滅、残る4
匹のガンも無投与の対照群に比べて、その大きさが10分の1から半分になっていたの
です。

●「ガンからの生還者」も出始めている

「ガン細胞に対しては増殖を阻止して消滅させるが、正常細胞にはダメージを与えない」
― こんな"夢の抗ガン剤"のような効果を見せたフコイダンが、肝臓ガンで2回の手術
(部分切除)を経験しながらまたも再発し、適切な代替療法を強く求めていた一人の患者
(57歳・男性)に与えられたケースを、安部博幸博士はその著書(前掲書)で報告していま
す。

 患者はフコイダン(1日量3g)、クレスチン末、ビタミン剤を服み(のみ)続けました。
そして6週目、当初126だった腫瘍マーカーAFP(アルファフェトプロテイン。基準値は20
ng/ml以下)が105へ(ここでクレスチンを打ち切る)、さらに4ヵ月後は76、半年後には
50へと下がったのです。
 副作用が全くなかったことも、予期した通りでした。




















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